柔整養成学校への進学を考えている高校生や社会人受験生の皆さんが、人生の大事な選択をするうえで騙されないためにも、入学案内等で都合よく使われる柔道整復師国家試験合格率のカラクリを解説します。
合格率は噓をつかないが、嘘つき学校は合格率を都合よく利用する
「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」
マーク・トウェイン(作家)
柔整養成学校への進学を考えている高校生や社会人受験生は学校の公式サイトやパンフレットを見て学校選びの参考にしていることでしょう。柔道整復師の免許を取ることを目標とするならばその学校の国家試験合格率は気になって当然です。
その合格率はウソではない場合がほとんどですが、受験生や新入生の勧誘のために学校が都合よく小細工したうえで表記している場合が多くなっています。
高校生や社会人受験生の皆さんがそんな手口に騙されないよう、学校が使う国家試験合格率の小細工マジックを解説します。
合格率の分類とその読み方
厚生労働省の公式発表による正確な合格率
年一回実施される柔道整復師国家試験は合格発表直後に全受験者数・全合格者数・合格率が公開されます。
それとほぼ同時に柔整養成学校ごとの受験者数・合格者数・合格率も公開されます。
毎年「第xx回 柔道整復師国家試験 学校別合格者状況」と題した資料が厚生労働省から配布されていて、そこには監督官庁が集計した正確な数値が掲載されています。
合格率データの読み方
学校別国試合格率は9項目の数値で公開されます。
総 数 | 新 卒 | 既 卒 | |||||||
学校名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |

総数・新卒・既卒

総数=新卒+既卒
・新卒
学校卒業見込み受験者の人数です。
専門学校/短大3年生・大学4年生が該当します。
・既卒
既に学校を卒業した受験者の人数です。
新卒で国試不合格、卒業後に再受験する受験者(いわゆる国試浪人)です。
卒業後1年目でも10年目でも平等に既卒扱いです。
・総数
学校全体での受験者全員の人数です。
合格率の傾向
おおよその傾向として、
・新卒の合格率は高め
・既卒の合格率は低め
となっています(例外あり)。

低い既卒合格率が新卒合格率の足を引っ張り、総数合格率は新卒のみの場合よりも低くなります。
例外として、廃校になった学校・柔道整復師学科が廃止された学校は新卒受験者がいないため、既卒の合格率がそのまま総数の合格率と同じ数値になります。
例1 SHINE柔整専門学校は、
3年生は50人が受験して40人が合格しました。新卒合格率は80%でした。
卒業生は10人が受験して2人が合格しました。既卒合格率は20%でした。
学校全体では60人が受験して42人が合格しました。総数合格率は70%でした。
SHINE柔整専門学校 | ||||||||
総 数 | 新 卒 | 既 卒 | ||||||
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
60 | 42 | 70% | 50 | 40 | 80% | 10 | 2 | 20% |
例2 御破算柔整専門学校は、
廃校になっていて新卒受験者は0人です。
卒業生は10人が受験して3人が合格しました。既卒合格率は30%でした。
学校全体でも卒業生と同じ数値でした。
御破算柔整専門学校 | ||||||||
総 数 | 新 卒 | 既 卒 | ||||||
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
10 | 3 | 30% | 0 | 0 | 0% | 10 | 3 | 30% |
※廃校になり新卒・既卒の受験生が一人もいなかった学校は合格率自体が集計・公開されません。
わざと誤認させる柔整学校の合格率表記
柔整養成学校が公式サイト等で自主的に公表している合格率はその数値は間違いではなくても、一部のデータのみを抜き出す・小細工を加えて高く見せる・印象を悪くするようなデータは公表しない、等のわざと誤認させるような手口を当たり前のように行っています。ごく一部の悪質な学校ではウソの合格率を表記しています。
これでは柔道整復師免許の合格を目指して柔整養成学校への進学を考えている皆さんが惑わされることがあります。以下、柔整養成学校が受験生(+そのご家族や進路指導者)を騙そうとする手口をパターン別に解説します。
新卒のみのデータを公表する
合格率が最も高い傾向にある新卒合格率のみを大々的にアピールします。
ごく小さな文字で「新卒」とこっそり表記してある手口が多めです。

学校としては不合格卒業生の国試対策やその結果にまで責任を負う必要は無く、新卒合格率のみをアピールすることは悪質な手口とは言えず特に問題ありません。
むしろ、「この学校に新入生として入学したとして卒業時に国家試験に合格出来る確率」が想像出来る材料になります。
合格率が高かった年度のみのデータを強調する
最新(前年度)の新卒合格率ではなく、たまたま特に合格率が高かった年度の数字を選び出してアピールする手口です。
一つの年度だけを選んだり複数年を意図的に選んだりとバリエーションがあります。
ごく小さな文字で「20xx年新卒」とこっそり表記してある手口が多めです。


数値自体はウソではありません。しかし、前年度や最近数年間の合格率は低かったのに、たまたま高い合格率だった年度を選んで誇らしげに表記している場合は要注意です。
授業や国試対策の質が落ちていたり、定員割れを避けるため学力不足の新入生を無理に入学させて学生の質が落ちている可能性があります。
複数年のデータを細工して印象操作する
過去数年間の新卒合格率をまとめて集計して平均値として表記しているパターンがあります。
ごく小さな文字で「20xx年~20zz年平均」のような表現でこっそり表記してある手口が多めです。

意図的に選んだ年度の数値を操作して偽装した合格率を表記する姑息な手口です。
これも過去の合格率は高かったのに最近は急に低下・低迷している学校が使うパターンが多く、授業や国試対策の質が落ちていたり、定員割れを避けるため学力不足の新入生を無理に入学させて学生の質が落ちている可能性があります。
ウソの合格率を表記する
ウソの合格率を公式サイトやパンフレットに表記している学校が少ないですが本当にあります。
ごく小さな文字で「20xx年」という表記さえありません。

ある柔整養成学校の公式サイトには90%を超える合格率を表記していましたが、その学校の過去10年くらいの学校別合格率を調べてみてもそのような数値だった事実は無くかなり悪質です。
国家試験を受験させず合格率を上げる
合格出来そうにない卒業見込み学生を最初から受験させず、優秀な学生のみ受験させ合格率そのものを上げる手口です。

合格率の数値を後から細工するのではなく、学校の権限で受験のチャンスを制限します。
一学年の定員が数十人なのに新卒受験者が数人しかいないような、新卒受験者数が極端に少ない学校は要注意です。
卒業間近になっても学校の権限で国試を受験させてもらえないかもしれません。
合格率自体を公表しない
都合のいい数値だけを公表する手口がある一方、合格率自体を公表しない場合もあります。

合格率が低めの学校は合格率について何も表記しない傾向が多めです。
講師が国家試験問題漏えいに関わっていた某柔整学校はかつて合格率90%以上を毎年叩き出し公式サイトやYouTubeで受験生の喜ぶ様子を公開していましたが、国家試験問題漏えいが出来なくなった途端に合格率が急落してからは突然合格率を表記しなくなりました。
ウソをついたり小細工するくらいなら最初から公表しないほうがよいでしょう。
学校別合格率を細工するような学校は避けましょう
自動車運転免許を取るために数十万円払って自動車教習所に入校して数か月通ったのに、試験で不合格となり免許を取れなければ意味がありません。
同様に、柔道整復師免許を取るために数百万円払って柔整養成学校に入学して専門学校3年間/大学4年間通ったのに、国試で不合格となり免許を取れなければ意味がありません。
私は個人的な経験から柔道整復師を目指すこと自体お勧めしませんが、もしも柔整養成学校に進学し柔道整復師免許取得を目指すのであれば、学校別合格率の現状や推移を十分に調べておくほうがいいでしょう。
合格率の数字を細工するような学校への入学は出来るだけ避けましょう・・・とはいえ、あらゆる手口で合格率を高めに見せようとせこい努力をしている学校のほうが多いのが実情です。
柔道整復師学校はそうでもしないと学生が集まらないことを痛いほど知っていて、それでも学校経営と自分の給料を守るためなら合格率の小細工くらい平気でやらかします。学校は「どうせバレない」「どうせ調べもしない」と進学希望者の皆さんをバカにしているのです。
進学を考えている皆さんにはこんな柔整養成学校への進学・柔整業界へ進むこと自体を考え直してみてはいかがでしょうか。
コメント