SHINE柔のコラム柔整の仕事

【柔整の仕事】柔整養成学校が不自然に推す”機能訓練指導員”について

柔整養成学校が新入生向けにやたらと機能訓練指導員としての活躍を推す傾向があります。
低賃金、雑用多い、医療とはほぼ無関係の介護職、なのになぜ機能訓練指導員が不自然なくらい持ち上げられているのか?その理由と背景をかんたんに解説します。
※機能訓練指導員として介護施設に勤務経験のある私の個人的な意見も含まれます。

機能訓練指導員とは

機能訓練指導員は各法令で以下の通り定義されています。

機能訓練指導員は、日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者とし、当該指定通所介護事業所の他の職務に従事することができるものとする。

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十七号)より引用
https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037

ごく簡単に言うと、介護保険制度における一部の施設で、利用者さんに対して身体機能が低下しないよう訓練を行える職員です。

これだけでは分かりにくいので、そもそも”機能訓練指導員”とは何なのかを簡単に解説します。

“機能訓練指導員”という独立資格は存在しない

“機能訓練指導員”とは介護保険制度での施設内で業務にあたる職種の一つです。
独立した資格や免許は存在しません。

主に医療系免許を持つ者が、一部の介護施設に機能訓練指導員として登録されると機能訓練のお仕事を担当出来ます。これにより施設が機能訓練に関する介護報酬を受け取れる(加算が算定される)だけです。

柔整養成学校の公式サイト等に「機能訓練指導員の資格が取得出来ます!」と記されていたり、柔道整復師の自己紹介で「所有資格:柔道整復師、機能訓練指導員」と記されていたりする場合がありますが、あれは全部ウソです。
機能訓練指導員という資格や免許はありません。

もしも柔整学校教員が「機能訓練指導員という資格はあります!」とウソをついたら、
「機能訓練指導員の免許証(または免許証明書等)を見せてください」
「機能訓練指導員の免許・資格を管理する団体の名称を教えてください」
と質問してあげましょう。
例えば柔道整復師免許なら免許証(または免許証明書)が発行されていますし、管理団体は「公益財団法人 柔道整復研修試験財団」です。機能訓練指導員には免許証も管理団体もありません。

柔道整復師だけの独占職種ではない

機能訓練指導員として業務に就けるのは柔道整復師だけではありません。
以下の医療系免許があれば機能訓練指導員の職務に就けます。

機能訓練指導員業務の対象免許
理学療法士
作業療法士
言語聴覚士
看護師/准看護師
柔道整復師
あん摩マッサージ指圧師
はり師・きゅう師
(※一定条件の実務経験が必要)

一部の介護保険施設のみしか配置されない

機能訓練指導員という職種は以下の一部の介護保険施設でのみ配置されます。

通所介護 (デイサービス) ※地域密着型・認知症対応型を含む
短期入所生活介護 (ショートステイ) ※地域密着型を含む
介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム) ※地域密着型を含む
特定施設入居者生活介護 (有料老人ホーム等) ※地域密着型を含む

※介護老人保健施設(老健)やグループホーム等の他施設では機能訓練指導員の配置は不要です。これらの施設から柔道整復師の求人もほとんどありません。

機能訓練=リハビリではない

介護保険制度における機能訓練はリハビリや医療行為と同等業務ではありません。
故に、柔道整復師は同じ介護保険サービスでのリハビリ職(訪問リハビリ等)には従事出来ません

機能訓練は条件次第で機能訓練指導員以外(ヘルパー等)が実施してもよい

介護保険施設における機能訓練は、機能訓練指導員の独占業務ではありません
条件次第でヘルパーや相談員等が機能訓練を実施して介護報酬を算定出来ます。

開設が長くなりますので以下に根拠となる公的資料を引用します。

Q.個別機能訓練加算について、機能訓練指導員が不在の日は加算が算定できないか

A.個別機能訓練を行うに当たっては、機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種が共同して個別機能訓練計画に従い訓練を行うこととしており、機能訓練指導員が不在の日でも算定できる

引用 公益社団法人 全国老人保健施設協会 https://hourei.roken.or.jp/detail.php?uid=1242

Q.個別機能訓練加算に係る算定方法、内容等について示されたい。

A.当該個別機能訓練加算は、従来機能訓練指導員を配置することを評価していた体制加算を、機能訓練指導員の配置と共に、個別に計画を立て、機能訓練を行うことを評価することとしたものであり、介護サービスにおいては実施日、(介護予防)特定施設入居者生活介護サービス及び介護老人福祉施設サービスにおいては入所期間のうち機能訓練実施期間中において当該加算を算定することが可能である。 なお、具体的なサービスの流れとしては、「多職種が協同して、利用者毎にアセスメントを行い、目標設定、計画の作成をした上で、機能訓練指導員が必要に応じた個別機能訓練の提供を行い、その結果を評価すること」が想定される。また、行われる機能訓練の内容は、各利用者の心身伏況等に応じて、日常生活を営むのに必要な機能を改善し、又はその減退を予防するのに必要な訓練を計画されたい。

引用 公益社団法人 全国老人保健施設協会 https://hourei.roken.or.jp/check/detail.php?uid=1709

機能訓練指導員は介護報酬算定には必要な立場であっても、機能訓練の業務自体はどの資格者が実施しても差し支えないお仕事です。

柔整養成学校が機能訓練指導員を全面的に推す理由

・独立資格ではない(そもそも資格ですらない)
・柔道整復師だけの独占資格ではない
(そもそも資格ですらない)
・働ける施設は限られ、他の医療免許者よりも少ない
と、制限制約だらけの機能訓練指導員という職を柔整養成学校は不自然なくらい推しています。なぜでしょうか。

介護業界への就職先がほぼこれしかない

主な医療職種が配置される介護施設/事業所を比較してみます。

看護PTOTST柔整あまし鍼灸
通所介護△2
短期入所△2
特養△2
特定施設△2
通所リハ△1XX
訪問リハXXX
訪問看護XXX
老健XXX
介護医療院XXX

△1 一定条件でのサービス提供に限る
△2 一定条件の実務経験が必要

前述の通り、柔道整復師は一部の介護保険施設のみしか配置されません
看護師と各療法士(PT/OT/ST)のほうが介護業界での活躍の場が圧倒的に多くなります。
柔道整復師は機能訓練指導員以外の選択肢では介護業界での就職が極めて困難であるため、柔整養成学校は「あなたも機能訓練指導員として大活躍!」と全面的に推さざるを得ないのです。

柔整師本来の仕事が少な過ぎる

柔道整復師本来の業務である急性外傷の治療とその後療の仕事は整形外科の普及と共に極端に少なくなりました。今後も需要が回復する見込みもほとんど無いでしょう。
その事実は柔整養成学校の教員が一番よく知っていて、それでも新入生を入学させて学校経営を維持させるには、外傷治療の他にスポーツトレーナー・美容、そして機能訓練指導員を推さざるを得ないのです。

柔道整復師が機能訓練指導員として就職する際の実情

 それでは、実際に柔道整復師が機能訓練指導員として就職する際に直面する主な実情を記してみます。

求人が多い理由は「すぐ辞める機能訓練指導員が多いから」

柔道整復師の求人情報を検索すれば機能訓練指導員の募集はいくらでも見つかります。
この職種にニーズがあることは事実ですが、だからといって介護業界で柔道整復師の需要が高まっているわけではありません。

特定の業種において求人が多い理由として、
・労働条件が悪くて人が集まらない
・退職者が多くて求人を何度も出している

という傾向があります。

機能訓練指導員として柔道整復師を募集する場合もこれに当てはまることが多く、給料・残業・休日等の条件は他業界に比べて良いとは言えません。柔道整復師が介護職に就職してもその業務内容や職場に馴染めなかったり、給料や休日が少な過ぎて数か月で退職するケースが多々あります。
結果として多めの求人が出ているわけですが、これは柔道整復師が高く評価されているわけでも、介護業界から求められているわけでもありません。勘違いしやすいポイントです。

柔道整復師の就業は少数派

機能訓練指導員として従事している医療免許保持者は、柔道整復師よりも看護師や各療法士(PT/OT/ST)のほうが圧倒的に多くなっています。
以下、厚生労働省が公開している最新(2023年)の資料です。

令和5年介護サービス施設・事業所調査の概況 職種別にみた従事者数
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service23/dl/kekka-gaiyou_2.pdf

令和5年介護サービス施設・事業所調査の概況より引用 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service23/index.html

この資料から機能訓練指導員としての従事者数を抜粋してみました。

特養通所介護地域密着デイ短期入所特定施設<↓従事者合計↓>
看護師371227528152004486275453680
准看護師27621609283403506129431994
理学療法士2629896237682187151619062
作業療法士14114210144811667118946
言語聴覚士3296362562221761619
柔道整復師10835292496887770612926
あま指師582177518384683044967
鍼灸師12558675079531593

柔道整復師は看護師(准看を含む)や理学療法士よりも明らかに少ないことが判ります。

給料は少ない+昇給は絶望的

柔道整復師が介護業界で機能訓練指導員として勤務する場合の給与はおおよそこの程度です。

機能訓練指導員として勤務する柔道整復師の平均給与
平均年収 300万〜450万円程度(賞与を含む)
平均月給 25万〜30万円程度

これは支給総額(いわゆる額面)であり、税金や社会保険料を差し引かれた手取り収入はもっと減ります。

機能訓練指導員として勤務する柔道整復師の実際の手取り収入
平均年収 250万〜350万円程度(賞与を含む)
平均月給 18万〜25万円程度

大卒新入社員が軒並み月給30万円近いこのご時世に、機能訓練指導員は40代で20万円前後の手取りとなることも当たり前です。正社員勤務であっても時給換算で手取り1000円以下になることも珍しくありません
しかも、機能訓練指導員としての業務だけではなく、施設清掃・洗濯・レクリエーション補助、送迎車運転手等の雑務までこなしてやっとこの給与が頂けるのが実情です
社会保険料削減が政策に掲げられていることから介護報酬は今後の大幅アップも期待出来ず、物価上昇分を補えるほどの昇給も絶望的です

介護職であって医療職ではない

柔整養成学校に3年間通って外傷治療に特化した柔道整復師免許を取得してから介護業界で機能訓練指導員として就職しても、外傷に関わる業務はほとんどありません

施設利用中に利用者がケガをしようものなら施設側の管理責任が問われることから、転倒防止・ケガ防止にはかなり神経を尖らせているからです。万が一利用者様がケガしてしまった場合も柔道整復師が外傷専門家としてかかわる場面はほぼありません。

例:デイサービス利用中に利用者が転倒・出血した場合

介護職員が看護師や責任者に即報告

看護師が処置

施設と提携しているか各利用者のかかりつけの診療所や病院に紹介して医師による診察・治療を受ける 

柔整養成学校が受験生に向けて「外傷専門家の技術を活かして介護業界で活躍!」「デイサービス等でケガをした利用者様の手当てが出来ます!」と白々しい言葉を並べていますが、そこまで輝かしく活躍出来る機会はありません。介護施設は病院でも診療所でも整骨院でもありませんから当然です

私がデイサービスで機能訓練指導員のアルバイトをしていたときは、利用者様への外傷処置はゼロ、同僚職員さんが転んでケガした際に応急処置として備品で作った副子を当てて、「整骨院には絶対に行くな、病院か整形クリニックで画像診断してもらえ」とアドバイスしたことが一度あっただけでした。

機能訓練以外の業務

前述の通り、施設清掃・洗濯・レクリエーション補助、送迎車運転手等の機能訓練指導員とは全く関係ない雑務を行わなくてはならない職場がほとんどです。
職場によっては送迎車の洗車やイベントでのコスプレまであります。

機能訓練指導員になるため柔整養成学校へ進学を考えている方々へ

柔整学校教員
柔整学校教員

柔道整復師の免許をとれば機能訓練指導員の資格が与えられます!

ウソです。
機能訓練指導員という独立した資格はありません。

柔整学校教員
柔整学校教員

柔道整復師は機能訓練指導員としての需要が高まっています!

ウソです。
看護師や理学療法士のほうが機能訓練指導員としての雇用が多く、
就職出来る施設や事業所も多いです。
単に離職者が多過ぎていつも求人が出ているだけです。

機能訓練指導員のお仕事はそれなりに有用性はありますが、労働環境としては決して恵まれてはおらず、今後の長期的なインフレ時代を乗り切れるほどの昇給も望めません。機能訓練指導員として働きたいのなら看護師や理学療法士になることをお勧めします。機能訓練指導員以外の職域が広く総合病院等への転職も出来ます。

「無知な学生に機能訓練指導員を推して新入生獲得して学費払わせてやれ!」という柔整養成学校のワナにかからないよう、高校生をはじめとした未来ある若者の皆様は十分にお気をつけください。

私も機能訓練指導員として通所施設に就職したものの半年未満で退職しました。次の仕事が見つかったことが理由で円満退職だったことと人生経験として大変有意義ではありましたが、また働きたいと思える仕事ではありませんでした。
柔整養成学校に進学を考えている皆様、デイサービスや入所施設を見学させてもらってください。そこには柔道整復師として食っていけず仕方なく機能訓練指導員として働く低賃金中高年職員が全国どこにでもいます。皆さんの人生と才能は他の業界で花開いてほしいと心から願っています。

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