あらゆる業界に存在する、いつも閉店ギリギリに来るお客様。
柔道整復師として絶対避けられない「いつも終業時刻ギリギリに来院する患者様」についてごく個人的なお話です。正直に書いていいものかかなり迷いつつも、柔整業界を去ることが確定したことを機に今まで言いづらかったことをここに書き残しておきます。
来客を待つ店舗の仕事では避けられない運命
整骨院には始業と終業の時刻があり、その診療時間内に患者様の応対をしています。
それでも、どうしても終業時刻間際に来院される患者様の応対で帰宅が遅くなることは避けられません。柔整のお仕事に関わる以上は仕方がないことと理解しています。
こちらも患者様あってのお仕事ですから数分遅れただけの患者様を断固お断りしたことは無く、患者様から「時間過ぎてしまってごめんね」と言われると悪い気はしません。
「終業ギリギリでも応対して当然」という態度は全力で嫌われる
ところが、ギリギリだろうが時間外だろうが来院を容認し続けているとそれを当然と受け取る患者様がいます。
時間外受付を断ろうものならクレームを入れられるようになります。

毎日毎日朝早くから夜遅くまで働き詰め、終業後に理不尽なクレーム対応までしなくてはならず精神が持ちこたえられそうにありませんでした。私だけではなく同僚柔整師たちはそんな患者様のことはほぼ全員が嫌がっていました。
笑顔の仮面かぶって応対しましたが、精神は削られていく一方でした。
時間外ギリギリ来院する患者様の傾向
こんな時間外ギリギリ患者様も一定の傾向がありました。
勤務または通学の都合上でやむを得ない
仕事や通学の都合上やむを得ず時間外ギリギリなってしまうパターンが最多です。
自分も患者として病院に行くときはたまにギリギリになってしまうこともあり、これは仕方がないことでお互い様と思っています。

たいていの患者様は「いつも遅くまですみません」と声をかけていただいたり、出来るだけ早く来院出来るよう工夫もして、治ったら速やかに来院を止めていました。至極真っ当な患者様の姿です。
自分の健康についてもギリギリまで行動しない
ごく一部に限りますが、無職だったり比較的時間に融通が利くはずの立場なのになぜか毎日のように時間外ギリギリで来院してばかりの患者様がいます。

傾向としては、切羽詰まった重症だったり至急対応を要する症状ではなく、どちらかといえば「なんとなく痛い」「このへんが何か気になる」程度の主訴がほとんどです。そして施術の際にお話を聞くと、運動不足・暴飲暴食・不規則生活が定着しているケースがほとんどでした。

いつも時間外ギリギリの患者様は自分の健康についてもギリギリまで放置している傾向が多く、自分の体調が悪いのは職場が悪い・社会が悪い・治せない医者が悪いと他責志向も強めです。もちろん、柔道整復師の私に対しても「不調が改善されないのは整骨院が悪い」と断言していました。
言い訳も多く、ふだんは「毎日が日曜日」「いつもヒマで一日中テレビばかり」と話しつつ、ギリギリ来院時には「電話してたら長引いてしまって~」「さっき部屋の片付けを始めてしまって~」等々、遅れた言い訳はスラスラとお話しされます。
病状とは直接関係ない話ですが、私が朝の出勤時に時間外ギリギリ患者様の姿を駅前で何度か見かけたときのことです。その患者様はいつも遅刻しそうになり駅まで走っているか、明らかに電車を逃している姿ばかりでした。
来院もギリギリ、出勤もギリギリ、健康管理もギリギリです。

医師が考えるギリギリ患者様の傾向
時間外ギリギリ患者様については同じことを考える医師もいらっしゃるらしく、医師向けサイトでこんな記事を見つけました(以下引用です)。
格言「終業間際の来院患者には気を付けるべき」の賛否は?
朝から病院に行かなければならないことが分かっていたのに、
まだ午前中だから大丈夫、まだ昼過ぎだから大丈夫、受付終了前だからまだ大丈夫…
とずるずる引き延ばす人は、
「重症のADHD」
「自己管理が恐ろしくルーズで生活習慣病」
「踏ん切りのつかない鬱病圏」
のどれかである可能性がある【脳神経内科】「終業間際に駆け込んでくる患者には、本来来院すべき時間を守らない気質がみられ、受診遅れの状態になっている人が往々にみられる」【整形外科】
m3.comより引用 https://www.m3.com/clinical/open/news/1138758

時間外ギリギリ患者様を切り捨てた意外な効果
私が整骨院を継いで自分が院長になってからも、患者の総数は少ないのにやたらと時間外ギリギリに滑り込む患者様がかなりいらっしゃいました。
積極的に患者を増やそうとしなかった私はあえて終業時刻を早めてみたところ、患者様は私の予想外の行動をとるようになりました。
終業時刻を早めてみたときのギリギリ患者様の変化
前院長は20:00終業と設定していて、その設定を19:30終業→19:00終業と段階的に早めました。
もちろん、変更数か月前から患者様に口頭で伝えたり貼り紙をする等の十分な告知期間を設けました。
1時間も早めたらギリギリ患者様は来なくなるだろうと予想していました。
するとどうでしょう、
20:00終業のときに20:00ギリギリ来院していた患者様は、
19:30終業になれば19:30ギリギリ来院、
19:00終業になれば19:00ギリギリ来院するようになったのです。

ギリギリ患者様はその時刻でしか都合がつかないのではなく、時間ギリギリでしか行動出来ない人というだけでした。
ギリギリ患者のために終業時刻を延長するのは悪手
この件について前院長に話をしたところ、「元々は19:00終業だったが、いつもギリギリの患者様が通いやすいように20:00まで延長した」という経緯があったそうです。
つまり、
・前院長 終業時刻を19:00から20:00に変更→19:00ギリギリ患者様が20:00ギリギリに来院
・現院長(私) 終業時刻を20:00から19:00に変更→20:00ギリギリ患者様が19:00ギリギリに来院
という事象が確認出来たことになります。
終業時刻を1時間程度早めたくらいでは患者総数にほぼ変化がありませんでした。

前院長は年齢的な要因はあれど、このような不要な長時間労働が心身を疲弊させた一因になったことは間違いありません。前院長自身がそれを認めていました。
時間外ギリギリ患者様のためと思っての診療時間延長は労働者(柔道整復師や従業員)の過剰な負担となる悪手です。
他業種のお客様商売にも気遣えるようになった自分の変化
時間外ギリギリ患者様の対応を通じ、自分も患者として病院へ受付ギリギリに行ったり買い物や飲食店に閉店ギリギリに滑り込むことがほぼ無くなり、接客業の皆様に対してより気遣いが出来るようになりました。
毎日診療!夜〇時まで受付!という長時間労働を誇る整骨院には患者として絶対に行くことはないでしょう。従業員さんがかわいそうです。というか私にはもはや患者として整骨院に用はありませんが。
まとめ
現在は診療時間をさらに短くしたり特定の曜日を午後休診にして、心身共により平穏な日常生活を取り戻しつつあります。患者数も激減して自由な時間が増え、こっそり続けている副業も順調に成果が上がっています。
庶民が生きていくうえで労働は避けられませんが働き過ぎは禁物です。
私としては自分の整骨院を廃院させて診療時間をゼロにすることが最終目標です。
これから柔道整復師を目指そうとする皆さんへ
柔道整復師として働き続けるには異常に長い拘束時間に耐え続ける必要があります。
長時間労働を何十年も続けるつもりが無いのであれば進路を考え直すことをお勧めします。
10代20代で体力に自信があるうちは想像もつかないでしょうが、中年以降になると気力体力が持たなくなり自分の時間や自由が奪われていくことに苦痛が積み重なっていきます。
現在柔整業界で働いている皆さんへ
心身の健康を守るための時短勤務または転職をお勧めします。
気力体力が落ちてからの廃業・転職はかなり辛いものになります(経験談)。
今後も働き続けるつもりの柔整業界の先生方、ギリギリ患者様へ真摯に応対しつつ終わりの見えない長時間労働よろしくお願いします。
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